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猪名川河川レンジャー

猪名川河川レンジャー

原口レンジャーの歴史紹介

 猪名川・藻川は、古くから周辺に水害をもたらす一方で、人々の暮らしや文化を支えてきました。その名残は現在も地域の各所に見られます。ここではその一部をご紹介していきます。

※この記事は、ニュースレターの原口レンジャーの連載をまとめたものです。

『有馬道』を歩く

 大阪や西宮、神戸を起点に有馬に向かう『有馬道』。有馬街道とも呼ばれます。
 まずは、大阪側から有馬に向かう『有馬道』に沿って、猪名川の歴史を辿ってみましょう。

①かつての交通の要衝『神崎』

 神崎は、有馬道の起点とされ、猪名川と神崎川の合流点付近の右岸側に位置します。大坂と西宮を結ぶ中国街道にあり、『神崎の渡し』の西側に栄えた宿場町です。数々の古文書に水運、陸運の重要地点として記されています。
 水運では、京都から淀川、三国川(現神崎川)を通って瀬戸内海へ出る要衝です。
 陸運では、大坂から中国街道を経て有馬道に入り、伊丹、小浜(宝塚市)そして有馬、その先の城崎(湯嶋)温泉へと至ります。また、神崎から中国街道を西に向かえば、尼崎、西宮、そして西国街道を通り中国・九州地方へ進むことができます。
 重要拠点であった神崎は、今も当時の宿場町の雰囲気を感じることができます。『神崎の渡し』付近には、航海の安全を祈念する金比羅さんの石灯籠が現在も保存(着船場に近い堤防上にありましたが、堤防工事のため移築)されています。

有馬道の道標
神崎の渡し 金比羅さんの石灯籠
※出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

②猪名寺廃寺跡

 藻川右岸の佐璞丘(さぼくがおか)公園の地に飛鳥時代から室町時代にかけて存在した寺院跡の「猪名寺廃寺跡」があります。昭和33年までの掘調査の結果、東に金堂、西に五重塔があり、それらを回廊が囲む伽藍配置が法隆寺とほぼ同等の寺院であったことがわかりました。伽藍は天正6年の荒木村重と織田信長の戦乱により消失し、廃寺になったと推定されています。ちなみに地名の『猪名寺』は為奈(猪名)に寺院が建てられたことからその名が付いたと考えられています。ですので猪名寺廃寺跡は猪名寺というお寺の廃寺跡ではなく、猪名寺という地にある廃寺ということなのです。

出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)
今も残されている礎石

③伊丹の清酒

 伊丹市指定文化財「鴻池稲荷祠碑」には、慶長5年(1600年。関ヶ原の戦いがあった頃)、山中新六幸元がこの地で初めて双白澄酒(もろはくすみざけ=清酒)を造ったと刻まれています。伊丹市は、これをもって「清酒発祥の地」を掲げています。(※清酒(日本酒)発祥の地を掲げるまちは他にもあります)
 伊丹で作られた清酒は猪名川や有馬街道を使って神崎を経由して大坂の川湊に運ばれ、そこから江戸へは樽廻船で出荷されました。江戸では伊丹のお酒は「丹醸」と呼ばれ、大変人気を博したとのことです。また正徳5年(1715年)には有岡城の城下町を中心に72軒もの造り酒屋があったといわれています。今では2社のみとなっているようですが、灘や北海道、伏見などに移転等し製造を続けている酒蔵もあるようです。お手元の銘柄の歴史を調べてみたら伊丹発祥という新しい発見もあるかもしれませんね。
 たくさんの酒樽を積んだ船が猪名川を下っていった…酒樽を背負った馬が有馬街道を歩く…そんな光景を思い描きながら、町並みにその風景を探して歩いてみませんか。

鴻池稲荷祠碑(伊丹市鴻池)
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)

④猪名野神社~伊丹緑地(伊丹段丘・東縁)

 伊丹の酒蔵からまた有馬街道を北上します。伊丹市立音楽ホールを過ぎると間もなく猪名野神社の鳥居が見えてきます。この猪名野神社は、創立年月日は定かではなく、延喜4年(904年)に尼崎市猪名寺から現在の位置に遷座されたとのことです。戦国時代には荒木村重により有岡城の惣構北端の「岸の砦」が置かれた場所でもあり、境内西側には土塁と堀跡が残っています。また江戸時代には「野宮(ののみや)」「天王宮」「牛頭天王宮」などと呼ばれ、伊丹郷町の氏神でした。明治2年の神仏分離で現在の「猪名野神社」に改められました。有岡城跡とこの猪名野神社の境内全域が国指定史跡となっています。
 猪名野神社の裏手から国道171号線までの約1.4kmにおよび緑道を整備されているのが伊丹緑地です。伊丹緑地は伊丹段丘の東縁に位置しています。猪名野神社裏手から北東方向に伸び県道尼崎池田線(13号)の伊丹坂トンネル(北行のみ。「なぜこちらだけトンネルが?」と思っていた方も多いのでは…)から北西方向への向きを変えます。また、西国街道が交差する場所は伊丹坂と呼ばれ、摂津名所図会にも描かれています。伊丹坂を当時の旅人と同じように歩いて登り伊丹段丘を感じてみてはいかがでしょうか。

有馬街道と猪名野神社の鳥居
緑道と西国街道の交差地点
出典:国土地理院(地理院地図を加工して作成)
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